「ヴィットリオ広場のオーケストラ」


ローマのヴィットリオ広場にはたくさんの移民が集まる。
そんな中、イタリア人ミュージシャンのマリオは、多国籍のオーケストラが結成できないか思案する。
一方、映画作家アゴティーノは広場にある劇場が閉鎖寸前であることを知り劇場を地元の手に取り戻して多様な文化の発信基地にしたいという夢を描いていた。
この2人が出会い、様々な困難を乗り越えながらついにアポロ11というオーケストラが誕生し、街は再生していく。
この映画では、本当にいろいろな困難が克明に描かれていた。
とくにインドの階級制度はネックだったようで「階級の低いヤツとは演奏できない」と言い出したりして、同じインド人でもどうしても相容れない部分があるのだということをマリオたちの目を通して私たち観客も知ることとなる。
また、多文化の坩堝なオーケストラなために言語もばらばらだったり「詞のない歌は歌じゃない」など、音楽の捉え方も個々で違っていて、だんだんマリオたちはやつれていく。
しかし、満足にリハーサルもできないまま秋のイベントに出ることになったメンバーたちは舞台の上でついに彼らのサウンドを完成させる。その様はとても感動的だった。
もう何度も終わりだと感じていたマリオだったが、このオーケストラは今も新メンバーを迎えたり、旧メンバーが脱退したりを繰り返しながら続いているらしい。
今回の映画祭でもっともよかったと思える映画のひとつであった。

ヴィットリオ広場のオーケストラ [DVD]

ヴィットリオ広場のオーケストラ [DVD]