北九州国際ビエンナーレ2009 映画上映+トーク:移民と映画

10/12 mom(祝)15:00− 映画上映+トーク:移民と映画
梁英姫 (映画監督、上映作品「ディア・ピョンヤン」)
栗原奈名子(映画監督、上映作品「ブラジルから来たおじいちゃん」)
司会:毛利嘉孝(社会学者/東京芸術大学准教授)
会場:GALLERY SOAP
入場料:1500円(+1ドリンク500円)


昨日私は映画の上映会に参加させていただきました。上映されたのはヤン・ヨンヒ監督の「ディア・ピョンヤン」と栗原奈名子監督の「ブラジルから来たおじいちゃん」の2本。
その後、監督2人を交え、ビエンナーレのテーマである「移民」と絡めた監督たちのトークを聴くことができました。
私は大変不勉強で、また単館で上映されていたり映画イベントのみで上映されているような映画作品はとても暗く、この2本についてはまったく知りませんでした。


最初に上映された「ディア・ピョンヤン」は、きっと映画が好きな方ならどなたでもご存知の作品でしょう。
監督のヤン・ヨンヒさんは在日2世で4人兄弟。ご両親は朝鮮総連の活動家でお兄さん3人は北へ「帰る」なか、一人大阪の生家に残り朝鮮系の学校で北の教育を徹底的に受けます。そのなかで自我が芽生え、次第に両親の思想や「北」への違和感を覚えピョンヤンのお兄さんたちに会いに行ったとき、その違和感は決定的なものとなります。
彼女は10年もの間、お父さんのドキュメントを続け、その違和感と家族や北の思想との間の葛藤を繰り返しつついわゆる「移民」一世として日本に済州島からやってきた両親のルーツ、思想の根源に迫っていきます。
映画は若い人、歴史に暗い人にもわかりやすいよう、冒頭は在日の方々の歴史の説明字幕が続きその後主人公である「アボジ(お父さん)」のインタビューが始まります。

次に上映された「ブラジルから来たおじいちゃん」は当時御歳92歳(93歳だったか)の紺野堅一さんという、やはり日本の政策によってブラジルへ移住した方が年に一度日本へ渡り、在日ブラジル人家庭の人々を訪ねて歩く様子を淡々と撮り続けています。
非常に穏やかな表情でありながら、ブラジルへ移住してから苦労の連続であった紺野さんのその生き方の姿勢や言葉には、とても重みがあります。
紺野さんは日本語が少し不自由だったりまったくしゃべれなかったりするブラジル移民の人たちや順応が早い子どもたちと言葉を交わし、どのように将来を見据えていくかを静かに話し続けます。
また、彼らの抱えている思いに静かに耳を傾けます。
ご自分の足と、公共の交通機関を使い、日本でもブラジルでも紺野さんは静かでありながらもあちこちに出かけ、人々と接し続けます。
その接する紺野さんの、穏やかな表情は、様々な困難を乗り越えてきた人生を達観しているようでありなにかとても言葉で言い尽くせない独特の存在感を放ちます。

この2本の、まったくアプローチの違う2本の映画は、しんしんと心に沁みるようで言葉という言葉はその意味を失っていくような力強さがありました。なので私の見た感想などをここに書いてもまったく意味がないように思います。とにかくそのくらい、心の中心に直球でずどんと来る映画2本を見ることができた、その事実が非常にいい意味で重く印象に刻まれるのです。
残念ながら「ブラジルから来たおじいちゃん」はまだDVDにはなっていません。また、ヤン・ヨンヒ監督は映画と同じタイトルの著書にはもっともっと詳細に描かれたものが盛り込まれており映画では描ききれなかったことが読めるともおっしゃっていました。(雪)

補足;在日北朝鮮および韓国人の国籍選択に関する詳細はコチラ→済州島四・三事件
なぜ済州島出身の「アボジ」が「北」を選んだのか、その背景となった事件です。

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