ぼくの久留米絣ものがたり/福岡県立美術館 他

ぼくの久留米絣ものがたり
福岡県立美術館
2008年7月19日(土)−8月27日(水)

【レポート】
 この展覧会は久留米絣の織物だけを展示している展覧会ではなく、実際にはたおりの体験ができ、その体験を通して久留米絣をよりよく理解できるいい展覧会だった。私も実際に織らせてもらったが「絣」という織物がこんなにも緻密な計算の上に成り立っている織物とは予想だにせず、やはり体験してみることは理屈以上に理解を深める第一歩として最も有効な手段なのだと実感した。
 普通、染物は織った布を下絵どおりにあとで染めていけばいいので簡単に頭で理解できるのだが、絣の場合は先に図柄どおりに糸を染めておくわけで、そのことについて何度も何度もスタッフの人に説明してもらったし実際に織ってみたりして一度は「なるほど」と思うのだが、いったんはたおり機から離れてしまうとやっぱり何でこんなに緻密に糸を染めてそのとおりに織りあがるのか、何度考えてもわからない。方法はわかってもどうしてこの部分を染めなければ下絵どおりに仕上がるのか、本当に職人さんってすごいな、の一言に尽きる楽しい夏休みらしい展示だった。

第9回 アーティスト・イン・レジデンスの成果展 Part1
Winds of Artist in Residence 2008 Part 1−
インドとフィリピンからやって来た2人のアーティストによる滞在制作展
福岡アジア美術館 交流ギャラリー(8階)
2008年8月16日(土)−8月31日(日)

ミーラ・ジョージ Meera George(インド)
ドン・サルバイバ Don M.Salubayba(フィリピン)

【レポート】
 いつもの成果展はロビーなどに点々と設置されているのだか、今回の展覧会は交流ギャラリーにまとめて展示してあったのでとても見やすかった。ミーラ・ジョージは映像作品が主で福岡のあらゆる場所で体に布を巻きつけたり解いたりを繰り返し、その繰り返しが訳もなく心地よかったが、この撮影許可を美術館サイドが取ったことは明白で、改めてレジデンスって便利だな、と感じた。
 ドン・サルバイバの作品は映像とインスタレーション、ドローイングなどさまざまな作品展開だったが影絵のような作品があったりドローイングのひとつひとつが面白かったりと見ごたえのある作品を展示していた。

 総括として、最近は私は「レジデンスの意味」とか「レジデンスならではの作品」とかにこだわっていたが、この二人の作品を見て、もうそんなことはどうでもいいかな、と感じた。結果として面白ければ(いい作品なら)レジデンスがどうのこうのというほうが無粋なんじゃないかと感じている。楽しい展覧会だった。(雪)