2月26日 松本哉氏レクチャーレポート

■日時 2月26日(木) 18:30〜
■場所 小倉 井手商店

素人の乱の概要、それに至った経緯の解説等の後
質疑応答

【レポート】
はじめに松本哉という人物がどんな人なのか、知っておく必要がある。彼は法政大在学中から、現在やっていることの素地を作っている。
まず、校舎建て替えに反対する運動をのらりくらりとやってのけオープンキャンパスの際にスーツと名札をつけて高校生を別室に案内し、「この大学は就職率がちょっと悪いんでおススメできませんねえ。お隣の日大なんかいいんじゃないですか?」など、好き勝手やっていたらしい(笑)
卒業後も東京のあらゆる駅で鍋パーティーを勝手に開き警察がやってきて「主催者は?」との質問に「誰なのかなあ、僕も今来たところなんでよくわかりません」と答えると、当時はそれほど規制が厳しくなかった時代背景もあり面倒くさくなった警察が「後片付けだけはしっかりやっとけよ」と帰っていくということを繰り返していた。
この、彼の行動の一連の背景には
「正論って、そのとおりなんだけどムカつくよね」
という考え方があって、その考え方は非常によくわかる。だから権力や金銭でものを言わせるやつらに対して人を食ったような行動をしてのらくらと対抗しているのだ。
彼がよく言う「貧乏人」と「金持ち」というのはその「権力を持つもの」と「そうでない、搾取されるもの」を非常にわかりやすくたとえた彼なりのロジックであり、時にそれは警察という組織であったり、時にそれは家賃の賃貸制度というものであったり、時にそれは政府が勝手に決めたPMS法というリサイクルを規制する圧力であったりいろいろなわけだ。
ということで、彼を社会運動家として捉えるのはちょっと誤解があるのだと私は感じていて、ましてやシャッター街を活性化させたヒーローと捉えるのもまた違うのだと思う。
彼の風貌は宮藤官九郎に似ているが風貌が似ているだけではなく、やはりどこか社会に対してまた、こうしたレクチャーに講師的に呼ばれることに対してどこか斜に構えて皮肉っぽく眺めている気がしてならない。それだけ、自分のやっていることをかなり冷静かつ客観的に見ることができる人だとそういう印象を受けた。
個人的な感想としては、この人に対してはきちんと人として向き合いたいな、と思うような人物でよかった、と思うことと、その反面、素人の乱シャッター街に抵抗がありつつも受け入れられたのは高円寺という、メルティングポット状態の土地柄で日本人もいればネパール人もいたり、上京したての友だちのいない人がいたりというかなり恵まれた環境の中だったからだということも感じた。
日本中のシャッター街ではやはり同じような試みがなされていて素人の乱は決して珍しい例ではないし他の土地でなぜシャッター街が活性化することが難しいのかといえば圧倒的にそこに居つく若者の数が少ないからでやはり東京一極集中なのかな、という構図をやや意地悪な目で見てしまう。ただ、お金のない若者で横のつながりを持つことのできないこの状況を素人の乱が打破したというのは、他所の土地にも何かしらの可能性があるかもしれない、とそう感じた。ニートや引きこもりも居場所さえあればきっと出てくる、かもしれない。出てこないかもしれないが。
とにかく、何かしらの正義感や正論とかそういうものとは一線を画したい人たちの話を60年安保にたとえて懐かしんでいるおっさんやおばさんの聞く話ではないわな、と思った。(雪)

素人の乱

素人の乱

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