ミーティングテーブル「芸術・環境・生活〜アート×エコロジー×エコ

zone1969jp2009-11-22

ミーティングテーブル
「芸術・環境・生活〜アート×エコロジー×エコノミー」

タイの古都チェンマイで美術家たちが共同で郊外の土地を運営しながら、各方面の専門家や地元の協力者とともに自給自足の生活環境を模索するプロジェクト「the land」。その活動の背景には仏教思想や福岡正信の自然農法などがあります。
このミーティングテーブルでは「the land」の活動を紹介するとともに、北九州におけるアート活動と環境活動の接点を探ります。

日程:2009年11月22日(日)
時間:14〜16時
場所:東田エコクラブ(福岡県北九州市八幡東区東田2-5-7 TEL:093-662-3100)

<パネラー>
パポンサック ラ・オー(美術家/チェンマイ在住、the land foundationスタッフ)
関宣昭(NPO法人里山を考える会 代表)
松永裕己(北九州市立大学 ビジネススクール 准教授)

司会:花田伸一(キュレーター/八万湯プロジェクト)
通訳:スティーラー・ウォンティー


□パポンサック ラ・オー Paphonsak La-or(美術家/チェンマイ在住)
タイ、チェンマイ大学美術学部絵画専攻卒業。「the land faoundation」副代表(2006年〜)。チェンマイを拠点に活動。参加プロジェクトに「アート・アゲンスト・ウォー(平和と戦争を超えて)」(2001年)、「ワン・デイ・ウクブク・プロジェクト(2ヶ月間のカルチャー・スケッチ)」(2002年)、「ワン・イヤー・プロジェクト(共同体に関する試み)」(2004年/チェンマイ、2005年/ノーランド・ノルウェー)ほか。
http://thelandfoundation.org/

□関 宣昭 Seki Noriaki(NPO法人里山を考える会代表)
企業のマーケティングプラン、広告宣伝計画、商品開発を行う企画会社を運営するなか、農業に関心を持ち、NGOパーマカルチャーセンタージャパンに就学。里山のシステムを持続可能な社会づくりの一つの方法としてとらえ、身の回りのあらゆる動物、植物、建築、エネルギー、コミュニケーションなど多種多様な要素を活かす生活スタイルのデザインを「里山的暮らしのデザイン」として提案し活動を始める。
http://www.satoyama.cn/

□松永 裕己 Matsunaga Hiromi(北九州市立大学ビジネススクール准教授)
北九州市立大学講師(1998年〜)を経て、現職。専門は環境ビジネス。「環境」と「ビジネス」という対極にあるように見えるものを両立させ、相互に発展させていくための方策を研究。「もののけ姫で考える環境ビジネス」などをテーマに講演活動も行う。著作に『「エコタウン」が地域ブランドになる時代』(共著:新評論)など。
http://matzemi.michikusa.jp/

□花田 伸一 Hanada Shinichi(キュレーター/八万湯プロジェクト)
北九州市立美術館学芸員(1996〜2007年)を経て現在フリーランス。八万湯プロジェクトメンバー。美術の社会的機能に着目しながら、北九州を拠点に調査・企画に携わる。主な企画「ことのはじまり」「福・北美術往来」「千草ホテル中庭プロジェクト」ほか。企画協力「街じゅうアートin北九州」。共著『thinking on the borderland』『フィールドキャラバン計画へ 白川昌生2000-2007』(水声社)。2009年8月チェンマイにて滞在調査。
http://hachimanyu.web.fc2.com/

【レポート】

11月22日に開催されたミーティング・テーブル「芸術・環境・生活〜アート×エコロジー×エコノミー」 の活動報告を致します。
当日は、冬の北九州らしい曇り空の中、総勢40名近くの方にお集まり頂きました。

先ず、パポンサック ラ・オー氏から、the land の報告。
花田氏によると、landの現地での意味、語感は、日本語の田んぼを意味するとのこと。
landでは、美術家が中心となって、農作業、家作り等を行い、地域に必要となれる活動を展開している。詳細は、うまく聞き取ることができなかったが、land の活動をとおして、様々な人の交流の場ができているようだ。landでは、「身体」、「くらし」、「心」が大きな柱=テーマとなっている。

つづいて、関宣昭氏からの報告。
パポンサック ラ・オー氏からも再度、発言のあった福岡正信の思想と実践について補足があった後、「里山を考える会」について活動の概略が説明された。
その活動の源流は、 Bill Morrisonが提唱したパーマカルチャーにあるという。パーマカルチャーというのは,人間にとっての恒久的持続可能な環境をつくり出すためのデザイン体系のことで、語そのものは、パーマネント(permanent 永久の)とアグリカルチャー(agriculture 農業)をつづめたものであり、同時にパーマネントとカルチャー(文化)の縮約形でもある◆。
このパーマカルチャーの日本版として、「里山」が想起されたとのこと。関氏の報告は、非常にイキイキとした躍動的な内容であった。
里山を考える会」が、現在、北九州でもっとも注目される活動であることの理由がとてもよくわかった。

そして、松永裕己氏からのお話。
経済学とは何か、という導入からはじまり、「芸術」「自然」「経済」をつなぐ、私達の新しい時代の局面の問題に関する話であった。
松永氏が強調していたのは、現代は、社会構造、経済構造は大きな転換地点にあるということだ。
landの活動にしても、里山を考える会の活動にしても、どう持続可能な活動にしていくのか、という問題が常に横たわっている。それは、現在、日本各地のNPO団体や、非営利組織にとって、一番の課題だ。
これは、八万湯プロジェクトにとっても大きな課題である。
松永氏からは、その持続可能な活動に転換していくためには、「経済」の視点からの活動のデザイン、運営が重要という提言があった。
もっと、話を聞きたい!そんな刺激と示唆に富んだお話であった。

今回のミーティングテーブルで、一番残念だったのは、報告者3人によるクロストークが実現しなかったこと。
これは、今回の企画者である花田氏も一番、残念に思っているようだが、今後、また、継続的に考え、語る場を提案していきたい、との言葉をもらった。

アートいう言葉を使わずに、想像力を駆使し、鮮やかにしなやかに考え、行動している人たちが、身近にたくさんいる。
このことに報告者は、強く心を躍らされた。(幹)